固定観念を超えて~遠賀郡岡垣町CS60出張施術日記~CS60LOHAS北九州緩み
- 管理者
- 8月16日
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暑さも和らぎ、暦の上では秋だが、まだまだ日中の厚さは厳しい。
ある日、福岡県遠賀郡岡垣町にあるお宅へCS60の出張施術にお伺いした。
リビングで施術を終え、奥様と三人で桃をいただきながら、冷たいほうじ茶を飲み、お話をしていた。
こちらのご主人は、几帳面で真面目な性格だった。
しかし、ほんの小さなことで、奥様とけんかしてしまったそうだ。
夫婦けんかの原因は椎茸だった。
ご主人はカレーといえば、じゃがいも、にんじん、たまねぎだった。
ある日、奥様が沢山の椎茸をいただき、おいしいカレーの作り方をおそわったそうだ。
椎茸、たまねぎ、にんじんで基本の重ね煮を作り、それをじゃがいもとともにカレーに入れたそうだ。
ところが、椎茸はカレーに入れるものではないという固定観念のせいで、大喧嘩になったそうだ。
ご主人は仕事の資料は常に右揃えで、会議の発言も「正しい手順」に沿って進める。
同僚からは信頼されていたが、同時に「ちょっと融通が利かない」と陰でささやかれることもあった。
彼自身も、その性格を直そうと何度も考えた。しかし、頭では理解していても、どうしても型から外れるのが怖かった。
ある日、ご主人は週末の気分転換に、一人で小さな港町のカフェへ立ち寄った。
そこは古い倉庫を改装した店で、木の香りとコーヒーの香ばしさが混ざり合っている。
店の奥の窓際には、一人の老人が座っていた。髭をたくわえ、古いスケッチブックを広げている。
「これ、君にも描いてみないか?」
不意に声をかけられ、悠一は驚いた。老人はスケッチブックと鉛筆を差し出す。
「僕は絵は描けません」
「描けなくていい。線を引くだけでもいいんだ」
試しに鉛筆を握ると、老人はにやりと笑って言った。
「ルールは一つ。利き手と逆の手で描くこと」
ご主人は戸惑った。左手で描こうとすると、線は震え、思い通りにいかない。
しかし、失敗を笑われることもなく、老人は「いいぞ、その歪んだ線が面白い」と言う。
線が予想外の方向へ跳ねるたびに、妙な爽快感が胸に広がっていった。
1時間も経たないうちに、彼の中で何かが外れる音がした。
完璧な形を求める自分が、急に小さく思えたのだ。
描き終えた紙には、子供の落書きのような風景が広がっていたが、不思議とそれが愛おしかった。
「君、固定観念ってのはな、固まった粘土みたいなもんだ」
老人は窓から海を眺めながらつぶやいた。
「逆の手で描くみたいに、意図的に不便なことをすると、粘土は少しずつ柔らかくなる」
その日から彼は、日常の小さなことをあえて逆の方法でやってみるようになった。
ネクタイの結び方を変え、通勤ルートを変え、朝食を夕方に食べてみたりもした。
すると、仕事の場面でも、以前なら却下していた突飛なアイデアを試す余裕が生まれた。
あの日の老人の言葉は、彼の中で今も生きている。
――不便は、自由への扉だ。

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