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米粒より小さな飛翔 ― 朝の箒が教えてくれた、身体の奥に眠る羽のこと〜喫茶猫屋堂整体。

――箒の先が、かすかに音を立てて砂を撫でた。


朝の光はまだ柔らかく、庭の石畳の上に長く影を落としている。私はいつものように外を掃いていた。静けさの中、ふと視線の端に、かすかな動きがあった。


米粒の四分の一ほどの小さな虫。

茶褐色の艶を帯びた殻が、朝日を受けて鈍く光っていた。よく見ると、尻尾には小さな棘のような突起があり、六本の脚で確かに歩いている。


その生命の律動に見とれていたとき、不意に――背中がぱかりと割れた。

そこから現れたのは、まるで折りたたまれた薄紙のような羽。

一瞬、風が止まり、世界が静止したように思えた。


羽が開く。

そして、浮かび上がる。


「え……?」


言葉にならない声が漏れた。

あんな小さな羽で、どうしてこんなにも重厚な身体を浮かせられるのか。

羽ばたきのたびに、空気が微かに震え、太陽の光の粒子が舞い上がる。


まるで、重力という法則の隙間を縫っているかのようだった。

反重力の装置でも内蔵しているのではないか――そんな荒唐無稽な想像が、ふと頭をよぎった。


人の身体も、もしかしたら同じなのかもしれない。

日々の疲れや、重く感じる心の影の奥に、まだ開かれていない“羽”が潜んでいるのではないか。


CS60の施術をしているとき、私はたびたびそう思う瞬間に出会う。

触れる手の下で、何かが静かにほどけ、身体の奥から光が立ちのぼるような感覚――

それは、あの虫の羽が開いた瞬間に似ている。


人は皆、自らの背中に眠る「羽」を忘れているのかもしれない。

だけど、それを思い出すきっかけは、ほんの小さなことから訪れる。

朝の掃除の時間、風の中の気配、あるいは、ふとした手のぬくもり。


小さな虫が空へ飛び立ったあと、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。

光はもう高く昇り、箒の影が短くなっている。


――私たちは、まだ知らない力を、きっとすでに持っている。


そのことを、米粒より小さな命が、今日もそっと教えてくれたのだ。


小さな発見が、心と身体を整える旅の始まりになる。


自然とともに、やわらかく、軽やかに。


喫茶猫屋堂整体

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