「左足の告白」~北九州市八幡東区CS60施術日記~CS60北九州緩み
- 管理者
- 8月3日
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夏の氣配がまだどこか居残っているような午後だった。
北九州市八幡東区の坂の多い町にあるその一軒家の玄関先には、風に揺れる緑の鉢植えが静かに並んでいた。
私はCS60を持って、ひとりの男のもとへと向かっていた。
その男性は、左足に少しだけ違和感を感じていると言った。
特に、足の甲、かかと、アキレス腱のあたり。
どこかに明確な原因があるわけではない。
ただ、まるで履き慣れた靴の中に異物が紛れこんでいるかのような、言葉にならぬ「居心地の悪さ」があるのだと。
施術は淡々と始まった。CS60の金属部分を肌に滑らせ、静かに探る。
いつもなら、わかりやすい反応がある。
こわばりが声をあげるように「痛い」と訴えてくる。
だが、その日は違った。
まるでホースの側面をなぞるように、肝心の「中身」に触れられない。
何かがそこにあると知っているのに、それが出てこない。
私は焦らず、しかし集中力を落とさず、手を進めた。
突然、それは来た。
薬指と小指の爪の付け根。
そこに差しかかったとき、じわりと反応が出たのだ。それは、まるで冷たい静寂の湖面にぽつんと落ちた一滴の水のように、はっきりと、しかも静かに波紋を描いた。
男性は言葉を発さず、ただ黙っていた。耐えることに意味があると、どこかで知っている人の顔だった。私はCS60を小指の爪にあてたまま動かさず、彼の呼吸のリズムと重ねるように静かに施術を続けた。どのくらいの時間が経ったのか。ふと氣がつけば、足の甲全体がやわらかくなり、血の通いを取り戻していた。
「抜けたかもしれません、何か、出ていったような感じです。」
そう言って彼は、目尻にだけ微かに笑みをにじませた。
赤くなった小指の皮膚が、ほんの少し、今日という日を記録していた。
休憩を挟んで、私たちは冷たい緑茶を飲んだ。
彼は最近、ポーカーに夢中なのだと言う。
大会にも出ている。
一見無表情に見えるその顔は、実は豊かな内面を覆い隠す仮面であり、計算と直観の間を綱渡りする者の顔だった。
「どこまで自分を出さないか、そこが勝負ですから」
そう言いながら、彼はまるで名探偵のように人間の心を読む。
だが、ゴルフの話になると急に表情が崩れ、「スコアはガタガタなんですよ」と笑った。
勝負に強くて、ふとした瞬間に脆い。それが人間なのだと思った。
休憩を終え、薬指にとりかかった。
また、耐える時間が始まった。だが、すでに希望という光は見えていた。小さな突破口が開けば、あとはゆっくり進んでいけばいい。灯りが、すでに足元を照らしていた。
施術が終わったころ、彼は左足をゆっくりと持ち上げて、軽く宙に浮かせて言った。
「これはもう……別の足ですね」
人は何度でも、生まれ変わることができる。
足ひとつ、手ひとつ、心ひとつ。
日常に埋もれた小さな違和感に、耳をすませば。
そこから、新しい旅がはじまることだってあるのだ。
北九州の午後。蝉の声の向こうに雲がゆっくりと流れていた。

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