パンの香と施術の午後 〜八幡西区にてCS60LOHAS北九州緩み 出張記〜
- 管理者
- 6月12日
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人はそれぞれ、日々の暮らしに小さな愉しみを見出しては、心の澱を洗い流すものである。
六月某日、わたくしは北九州市八幡西区なる住宅街に、CS60の出張施術のご依頼を賜り、風に乗って赴いた。
陽の光がやわらかに射し込む家の門をくぐり、初対面の御婦人に迎えられる。ふくよかな笑顔に、どこかなつかしいようなぬくもりを覚えた。
施術の用意をしつつ世間話を交わすうちに、このご婦人、近頃パン作りにご執心との由。
「こねている時が一番、無心になれるんですよ」と微笑まれた。何とはなしに、こちらまで無性にパンが恋しくなったのは言うまでもない。
施術はゆるやかに進み、からだのこわばりを、CS60の滑らかな動きと共に解きほぐしてゆく。力まず、焦らず、ただ相手のからだと呼吸に耳を澄ませる。
その在りようは、まるで発酵を待つ生地にそっと布巾をかけて見守るかのごとき心持ちであった。
全身の施術を終え、さてと荷をまとめかけたところ、「焼き立てのパンがあるんです」とのお声。リビングに案内され、わたくしは素朴な木のテーブルに着く。すると、ほのかに甘く香ばしい匂いが鼻先をくすぐった。「これは白神こだま酵母を使った丸パンなんですよ」と彼女。
手渡されたパンは、なんとも温かい。ひとくち齧ると、外は軽やかに歯を弾き、中はふわりとした優しさが舌に届いた。素朴だが、芯の通った旨さ。使われた素材と手間のすべてがその一口に宿っている。
次いで、彼女はもう一皿を差し出す。「こっちはリンゴ酵母から作ったパンなんです」
おや、と驚きつつ口に含めば、先ほどの丸パンとはまた異なる世界が広がった。やわらかな酸味と、果実の気配のようなものが微かに潜んでいる。驚くべきことに、酵母も手作りとのこと。「リンゴと水と時間だけで、こんなに不思議な香りが立ち上がるんです」との話には、ただただ感心するばかり。
酵母が生きて、時間を経て、やがてパンへと姿を変える。その営みは、まさに自然と人との共同作業にほかならぬ。
こねる手、待つ心、火加減の見極め、素材への敬意。それは、まさしくCS60の施術にも通ずるものがある。ただ力任せに解せば良いのではなく、身体の声を聞き、時を尊び、手を通じて対話すること。
我が施術の旅路において、パンを介して一つの大切な理(ことわり)に触れた心地がした。
パンの香り漂う午後。柔らかくほぐれた身体と心を抱えて、わたくしはまた次なる訪問地へと足を向けた。
ふと、パン焼きの台所に残る余熱のぬくもりが、背中にやさしく残っていたような氣がした。

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