【雨の庭と、静かな手──若松の海を越えて】CS60LOHAS北九州緩み
- 管理者
- 3 日前
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連日の猛暑の中の曇り空。
空はまだ泣き出す前のような顔をしていた。私は北九州市若松区の海沿いにたどり着いた。
目的地は、築三十年を越える平屋だった。小さな庭に、紫陽花と山椒の木、そして甘い香りのクチナシがそっと並んでいる。
そこに住むのは、七十代の女性。元は保育士で、今はご主人とふたり暮らし。
手には家事の跡があり、指先は節くれている。それでも、洗濯物を干すその姿は、どこかしゃんとしていた。
「ここらは潮風がきつくてね。木も花も、よく育つわけじゃないけど、それでも咲くのよ」
そう言って笑う声が、雨の匂いと混ざった。
リビングに通され、CS60の施術が始まる。
初夏の湿氣が、体に染みついているのが手に伝わってくる。
肩の奥、肘のまわり、膝の裏、すこしずつ、ほどけていく。
静かな時間だった。テレビもラジオもつけず、ただ海からの風がカーテンを揺らしていた。
「昔はね、手を動かすのが当たり前だったの。縫い物も、野菜の皮むきも、子どもたちのお世話も。いまはそれが、ちょっと億劫になってきたの。でも、こうして手を当ててもらうとね、不思議と、自分の身体がまた働いてくれそうな氣がするのよ」
その言葉が、心の深いところに届いた。
施術が終わり、玄関まで見送られたとき、ふと視線が庭の隅に止まった。
小さな鉢植えの中で、ミニトマトの苗が揺れていた。
「孫が植えたの。育つかしらね?」
その問いかけに、私は笑顔で応えた。
そして、赤く色づく未来の実を想像しながら、黙ってうなずいた。
その日の雨はどこか、やさしい雨だった。
家庭を支える人の背中にも、休む人の指先にも、等しく降る雨だった。
CS60LOHAS北九州緩み

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