冬の夜に灯る味の記憶 ―串カツの店主源蔵の声とすき焼き〜喫茶猫屋堂整体〜CS60LOHAS北九州緩み
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- 10月26日
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青年はまた、あの六地蔵の小さな祠に立っていた。冷たい風が吹き抜け、枯れ葉が石畳を転がっていく。
手にした線香に火をつけると、白い煙がゆらゆらと立ちのぼり、冬の空へと消えていった。
そのとき、祠の脇に小さな紙切れが落ちているのが目に入った。
拾い上げると、手書きの文字がそこにあった。青年は不思議な氣持ちでそのメモを写し、自宅に帰ると、すぐに羅臼昆布を買いに出かけた。
昆布を水に漬け、一晩寝かせる。
翌朝、ゆっくりと火を入れ、香りが立ちのぼると、部屋の空氣が静まり返った。
だしをとり、メモに従って醤油と味醂、酒、甜菜糖を合わせる。
味見をすると、深い旨味と穏やかな甘みが広がり、心の奥にやさしい温もりが灯った。
「これを、何に使うのだろう」
そう呟きながら、青年は前に作った串カツのタレに少し加えてみた。
味は驚くほど変わった。
懐かしい香ばしさの中に、まるで祈りのような静けさが溶け込んでいる。
「少し、美味しくなった気がする」
そう思った瞬間、心の中で源蔵の笑い声が聞こえたような氣がした。
それから数日後。
寒さが一段と深まったある夜、青年は温かい鍋が食べたくなり、すき焼きを作ることにした。
牛肉、えのき、いとこんにゃく、長ネギ。
材料をそろえ、鉄鍋を火にかけ、じゅうっと音が立った。
いつものように砂糖を入れようとしたその時――
「……ワリシタ」
ふと、耳元で源蔵の低い声が聞こえた。
青年は思わず手を止めた。
鍋の向こうには誰もいない。
ただ、ゆらめく湯気の中に、源蔵の笑った顔が浮かんだような氣がした。
青年は砂糖を戻し、代わりに先日の“昆布だしの醤油タレ”を注いだ。
湯気が立ちのぼり、部屋いっぱいにやさしい香りが広がる。
一口食べると、心の奥がじんわりと温まった。
それは懐かしさでもあり、安心でもあり、どこか「導かれている」ような味だった。
青年は箸を置き、静かに手を合わせた。
あの店主は、もうこの世にはいないのかもしれない。
けれど、その想いは味として、祈りとして、今も生き続けているのだろう。
――料理とは、心を写すもの。
誰かの想いが伝わり、また別の誰かの手に宿る。
それは、CS60の施術と少し似ている。
手の中に、言葉では伝えられない「ぬくもり」が流れ、
やがて相手の身体と心を静かに整えていく。
青年は湯氣の中で、ふと笑った。
源蔵の「ワリシタ」の声は、ただの記憶ではなく、
彼の心が少しずつ“整いはじめた”ことの証だったのかもしれない。
喫茶猫屋堂整体
CS60LOHAS北九州緩み





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