冬の静けさが降りてくる夜、貴腐ワインをひとしずく落としたぜんざいと共に、心と身体がそっとゆるんでいく物語。喫茶猫屋堂整体〜CS60LOHAS北九州緩み
- 管理者

- 11月22日
- 読了時間: 2分
外の空氣はすっかり冬の匂いを帯びはじめ、夕暮れの薄紫が静かに街を包んでいた。
日が落ちると氣温はぐっと下がり、風の冷たさが手の甲に触れるたび、体が小さく震える。そんな夜には、どうしても温かいものが恋しくなる。
今夜の台所には、ふわりと甘い香りが満ちていた。
朝からゆっくりと炊き上げた小豆が、ふつふつと柔らかく湯氣を立てている。甜菜糖を三度に分けて落とし、最後にほんのひとつまみの塩で味を引き締めた、丁寧なぜんざいだ。
――ふと手が止まる。
棚の奥で光っていた、小さな瓶。とっておきの貴腐ワイン。
その琥珀色を眺めていると、ふいに「少しだけ入れたらどんな夜になるのだろう」と、胸の奥に小さな好奇心が灯った。
そっと、数滴。
木ベラで静かに混ぜると、甘い香りに重なるように、ほのかな白ワインの氣配が立ちのぼる。
匙を一口。
あたたかい小豆のやさしい甘さの奥に、すうっと細い光のような風味が重なった。
うっすらと白ワインの余韻が広がり、ぜんざいがふしぎと「夜の顔」を持ちはじめる。
和でもなく、完全な洋でもない。まるで大人の物語にそっと添えられた一節のような味わい。
窓の外では、桜が暗闇の中でわずかに揺れている。
この静けさの中で、貴腐ワインの香りを纏ったぜんざいをすくうと、不思議と胸の奥がゆるみ、今日の出来事がすっと整っていくように感じられた。
ふと、明日の施術の準備のことを思い出す。
CS60の施術は、お越しくださる方にそっと寄り添いながら、身体のめぐりが穏やかになるようサポートする時間だ。
季節の変わり目には、体のリズムも揺れやすい。だからこそ、こうした小さな夜のひと息が、自分自身を整える大切な“間”になるのだと思う。
湯氣のゆらぎを眺めながら、もう一口。
白ワインの余韻がふわりと長くのび、心はやわらかくほどけていく。
――こんな夜があってもいい。
静けさと、甘さと、ほんの少しの冒険心。
それらが混ざり合ったこの一杯は、明日を迎える自分への、小さなご褒美になった。





コメント