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北の風が吹いた午後に 〜喫茶猫屋堂整体。CS60LOHAS北九州緩みの物語〜



北風が街を抜ける午後、

喫茶猫屋堂の扉が、カランと音を立てて開いた。


最初に入ってきたのは──髪の長い女だった。

艶やかな黒髪が肩にかかり、静かに笑うその姿に、店内の空氣が少し柔らかくなる。

彼女は「肩のこりが取れなくてね」と言いながらも、どこか余裕のある目をしていた。


「どうぞ、おかけください」と声をかけると、

すぐ後ろから、二人の男が連れ立って入ってきた。


ひとりはおひとよしな笑顔の男。

人が困っていると放っておけず、誰かの話にすぐうなずくような、やさしい目をしている。

もうひとりは涙もろい男で、最近は何かにつけて目頭を押さえているらしい。

「いやぁ、昨日テレビで犬の再会の番組を見てね……もうダメで」と、

笑いながらも鼻の奥を赤くしていた。


そこへ、店の奥からふらりと現れたのが女好きの男

彼はまるで風のように生きている。

「おう、今日も綺麗なお嬢さんが来てるじゃないか」

そう言って、すぐさま髪の長い女の隣に座る。

けれども、彼の軽口に女はただ微笑むだけ。

「そういうの、聞き慣れてるの」と、

声を少し低くして言った。

それがまた、場を和ませた。


奥の席には夢追い人がいた。

ギターケースを抱え、旅の途中のような風貌。

「まだ曲が完成しないんだ」とつぶやきながら、

黙って温かいコーヒーをすすっていた。


そして、窓から見えるのが──

煙草をくわえた年配の男性。

その指先に、髪の長い女がマッチを取り出し、静かに煙草の先に火をつけた


その瞬間、外の空氣が変わった。

柔らかな煙がふわりと立ちのぼり、

誰もが少し黙り込んだ。

それはまるで、過去のどこかに置き忘れた時間が、

ふたたび灯をともしたような、そんな光景だった。


やがて、施術が始まった。

CS60を手に取り、一人ひとりの体に触れていく。

おひとよしの男は、

「こんなに楽になるんですね」と、何度も笑った。

涙もろい男は、「何か……流れていく感じがします」と、

静かに涙をぬぐった。


女好きの男はというと、

「これ、モテる体になるんじゃないか?」と冗談を言い、

夢追い人は、「指があたたかくなってきた」と言って、

ギターを構える仕草をした。


髪の長い女は最後まで静かに受けていた。

終わったあと、ゆっくりと鏡を見て、

「なんだか、顔が明るく見える」と微笑んだ。


北の風が少し冷たくなりはじめた夕方。

店の外に出ると、

夢追い人がギターを弾き始めた。

やわらかなメロディーが、

街の灯りに溶けていく。


涙もろい男はまた目を押さえ、

おひとよしの男は肩を貸し、

女好きの男は笑いながら猫パンを食べている。

そして──髪の長い女は、

誰にも見えない表情で、小さくため息をついた。


「また来るわ。あの光の感じ、忘れられないから。」


そう言って、彼女は夜の街へ消えていった。


その背中に、北の風がやさしく吹いていた。


喫茶猫屋堂整体

CS60LOHAS北九州緩み

 
 
 

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