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午後三時、マンションの風が変わるとき —— 八幡東区・風鈴の音に包まれて

この日の空は、まるで水を張った硝子の皿をひっくり返したような青さだった。

施術先は、八幡東区のマンション。

エレベーターで最上階まで上がると、扉の向こうにはひんやりと冷えた風が吹き抜ける部屋が待っていた。風鈴がひとつ、縁側に吊るされている。その音色は、暑さの中にひとすじの涼を注ぎ込んでいた。


依頼主は女性だった。柔らかい笑顔と、控えめな物腰。けれど、部屋の片隅に並んだ本とレコードが、その人となりを物語っていた。「若いころはよく旅をしたんですよ。リュックひとつでね」施術の前に少し話をしたが、その口調には軽やかな風のような自由さがあった。


今回は特に、足のむくみが氣になるとのことだった。足首、ふくらはぎ、膝裏、太もも。CS60を軽やかに滑らせながら、私は足全体の流れを整えていく。しばらくすると、彼女の足先がほんのりと色づき始めた。氣が巡ると、身体は内側から目覚めていく。

「なんだか、足が楽になって、浮いてるみたい」そう言って笑ったその声に、こちらも自然と頬がゆるんだ。


その後、腰と背中へと施術を進め、最後にお腹を確認する。「ここが少し、つかえてる感じがしてたのよ」そう言われた場所に、確かにわずかな停滞があった。CS60を静かに当て、氣の動きを見守る。やがて、波紋のようにやわらかく、そこにあった何かがほぐれていくのがわかった。


顔と頭を仕上げに施術していると、彼女はすっかり眠ってしまった。窓からは風が入り、風鈴がひとつ、またひとつと揺れた。その音に包まれながら、私はしばし手を止め、静けさを味わった。


施術後、彼女はコーラとともに、レコードを1枚かけてくれた。流れてきたのは、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」だった。「これ、旅先の夜行列車の中でよく聴いたのよ」そう言って遠くを見る目に、かつての旅の記憶が宿っていた。

「また、どこかに行きたくなっちゃうわね。足が楽になると、心もふわっと浮くのね」そう言って笑うその人は、まるで今にも旅支度を始めそうだった。


施術というのは、ただ体を整えるだけじゃない。その人の中の“旅心”や“自由”や“夢”を、もう一度目覚めさせることもあるのだ。

私はその後ろ姿を見送りながら、団地の風が少しだけ変わったような氣がした。午後三時、夏のひととき。整った体と心が、新しい旅の一歩を踏み出す。

風鈴

 
 
 

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