古びた喫茶店での老紳士との対話〜八幡西区CS60訪問記〜CS60LOHAS北九州緩み
- 管理者
- 8月24日
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八幡西区の街に、ひときわ古びた喫茶店がある。
カーテン越しに射し込む午後の光が、テーブルの木目をやわらかく照らし、どこか懐かしい香りが漂っていた。
その日、私はCS60の出張整体の帰り道に、ふと立ち寄った。コーヒーを注文すると、店主が「今日は特別ですよ」と言って、分厚い陶器のカップを差し出してくれた。ひと口含むと、深みのある苦味の奥に、不思議なやさしさが広がる。まるで、長い旅の途中でふと立ち止まった時に感じる安堵のようだった。
窓際の席には、常連らしき老紳士がひとり座っていた。白い髪に、深く刻まれた皺。その人は本を閉じ、こちらをちらりと見てから、ゆっくりと話しはじめた。
「若いころはね、いつも正しい道を選ばなきゃと思っていたんです。でも年を重ねると、どの道を選んでも、正しさも間違いもなく、答えが出ないのが人生なんだと氣づきました。」
その言葉は、静かな喫茶店の空氣に溶け、私の胸に深く響いた。
人はみな、日々の暮らしの中で正しさや答えを探している。けれど、正解がどこかにあるのではなく、自分の歩みそのものが答えであり、流れゆく変化のなかには正解も不正解もないのではないだろうか。
氣がつけば、カップの底にはもう一滴も残っていなかった。窓の外では、夕暮れが街をやわらかな橙色に染めていた。
店を出るとき、老紳士が軽く会釈をしてくれた。その何氣ない仕草に、不思議と背筋が伸びる。
喫茶店を後にしながら、私は心の奥に小さな灯がともるのを感じた。
それはまるで、日常の隙間に差し込んだ一筋の光のように、静かに、確かに、これからの道を照らしていた。
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