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文字による芸術作品の不変性と歌による蘇生回帰のエネルギーとCS60について〜CS60LOHAS北九州緩み〜

夜の帳が静かに降りると、庭の草むらから虫の音が重なり合って聞こえてくる。ひとつ、またひとつと旋律が加わり、秋の合唱団は日ごとに音を厚くしてゆく。耳を澄ませば、それはどこかで読みかけの古い物語の続きを催促する声のようにも思える。


私は机の上に積み上げた数冊の本のうち、一冊を手に取った。昭和三十年代に出版された、少し黄ばんだ古書。ページを繰ると、そこに広がる文字の世界は、現代の印刷とはまるで違っていた。文字が微かに揺れている。真っ直ぐではなく、ひと文字ごとに息をしているかのように、少しずつ曲がり、ズレている。


どうやら、一文字一文字が印鑑のように押され、組み合わされて作られているらしい。さらに、その横に小さな文字で寄り添うようにふりがなが置かれている。すべてが人の手を介して紡ぎ出された、温もりを感じる頁であった。


思えば、昭和以前の言葉は、今とはまるで違う。口に出す言葉も、心に響く響きも、同じ「日本語」でありながら異なる世界を宿している。言葉は時代と人を映す鏡であり、一人ひとりの育った環境により意味が変わる。ある人には喜びを与え、別の人には怒りを呼ぶ。言葉ほど多様で、不確かで、そして豊かなものはないのかもしれない。


では、後の世代に何かを託すとき、言葉は本当に有効なのだろうか。誤解を生み、解釈をすり抜ける言葉。時代が変われば、共通の意味も揺らいでしまう。ならば、言葉以外の方法はどうだろうか。


絵はどうだろう。かつて描かれた熊の姿は、恐ろしくも力強い生き物として残されている。一方、今の子ども向けの絵本に出てくる熊は、まるでぬいぐるみのように愛らしい。人と熊の関係が変われば、絵の中の熊も姿を変える。素材は時に風化し、色も薄れる。それでもなお、絵は感情を揺さぶる力を持つ。


けれども、やはり「文字」というものは不思議だ。紙を替えれば蘇り、何百年経っても同じ形で人に届く。文字による芸術の不変性には、どこか永遠を思わせる力がある。


そして、もうひとつの方法――音。音は空氣を震わせ、身体の奥深くにまで届く。私たちの細胞ひとつひとつを揺らし、見えない記憶を呼び起こす。歌に救われ、歌に寄り添いながら生きた人は少なくないだろう。言葉と音が重なり合う「歌」には、人を元氣にする蘇生のエネルギーが宿っているのかもしれない。


秋の夜長、虫の音に包まれながら古書をめくると、過ぎ去った時代と今とが静かに溶け合っていくようだった。文字も、絵も、音も、それぞれに限界があり、同時に可能性がある。その揺らぎの中で、人は自分だけの「解釈」という灯を見出してゆく。


私の小さな仕事もまた、言葉や音のように、人の身体を通して何かを残せるだろうか。CS60を手にし、触れるそのひとときに、言葉を超えたものが伝わっているとしたら――そう願いながら、私は静かに本を閉じた。


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