朝日とレモンパウンドケーキの余韻――中間市CS60施術日記 CS60LOHAS北九州緩み
- 管理者
- 7月27日
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中間市にぽつんと佇む一軒の家がある。
朝日が照り、澄んだ空氣のなか、私は今日もCS60の施術のためにその家の玄関に立った。
この地に来るのは、先日伺ったハーブガーデンの美しいお宅以来だった。あの時は、ラベンダーやレモングラスの香りがそよ風と共に漂い、まるでどこかの異国にいるような氣分だった。
そして、今回はそのすぐ近く、見晴らしの良い畑のある家。ご自宅の裏手には段々畑が広がり、とうもろこしが青空に向かって背を伸ばし、ゴーヤのツルが元氣に葉を揺らしている。キュウリ、茄子、ししとう……どの作物もまるで「ここにいるのが嬉しいんです」とでも言うように、陽の光を全身で浴びていた。
この家に暮らすご夫婦は、まさにその作物たちのように自然体で、いきいきとしている。
「毎朝、ウォーキングをしてるんですよ」とご主人が笑顔で話す。
朝日が差し込む道を並んで歩き、帰りには軽く畑に水を撒く。その一連の流れが、ふたりの一日を静かに、そして豊かに開いていくのだという。
ご主人は最近、登山に目覚めたそうだ。
「同じ山でも、春は霞がかかって幻想的だし、夏は緑が濃い。秋は紅葉がまぶしくて、冬は空氣が張り詰めててね……」
そう語る目には、風景だけでなく、そこに流れる“時間”を慈しむような温かさがあった。
登山道ですれ違う人たちには、いつも「こんにちは」と声をかけるそうだ。
「山では、そういうのが自然なんです」と、照れたように笑った。
奥様は、というと、今は洋菓子作りに夢中だという。
「最近ね、オーブンの癖もわかってきたんですよ」
クッキー、マドレーヌ、レアチーズケーキ、そしてシフォンケーキ。
キッチンが小さな製菓工房と化す日もあるそうだ。
施術が終わるころ、ふわりと甘い香りがリビングに漂ってきた。
「良かったら、どうぞ」
と出してくださったのは、小さなレモンパウンドケーキ。
ひと口。
たったひと口で、私はしばし言葉を失った。
やわらかく、でも確かな弾力があり、口の中でスッと溶けていく生地。
その軽やかさは、朝にとれたばかりの卵がふんだんに使われているからだろう。小麦のやさしい甘みと、レモンの皮のほんのりとした苦味が、バランスよく広がる。これは、ただの“美味しいケーキ”ではない。
その味には、奥様の丁寧さがあり、ご主人の山へのまなざしと同じく、日々を見つめる静かな熱量がある。何より、素材を活かすために手をかけすぎない優しさと、信頼のようなものが感じられた。まるで夫婦のあり方そのもののように。
「やっぱり、お店の味より美味しいですね」と私が言うと、奥様は照れたように笑って、
「そう言ってもらえると嬉しいですね。でも、きっとこの空氣と景色が調味料なんですよ」と。
確かにそうかもしれない。
朝露をまとった野菜たちの輝き、風に揺れる草のささやき、ご夫婦が並んで歩く朝の道――そのすべてが、このレモンケーキの味に溶け込んでいた。
ふたりは、ただ仲が良いというだけではない。
お互いを尊重し、支え合いながら、同じ方向へ歩いている。
それは、未来を見つめるというより、“いま”を豊かに生きることに似ていた。
私はその姿に、ふと胸の奥があたたかくなるのを感じた。
この仕事をしていて良かったと、そう思える時間だった。
中間市には、今日も風が吹いている。
明日もまた、誰かの暮らしにそっと寄り添えるように。

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