若松区の雨上がりの空と、冷えた缶コーヒーの味ーCS60LOHAS北九州緩みー
- 管理者
- 8月10日
- 読了時間: 3分
短時間に降った激しい雨が、街をさっと洗い流していった。蝉の声が静かに鳴りやまず、空の遠くでは雷が重たい音を響かせていた。夏の空気が一気に緩み、葉の色が濃く映える午後のことだった。
その日、私は北九州市若松区の緑豊かな住宅街へ、CS60の出張施術に向かった。家々の軒先には夏草がそよぎ、道端に咲いた朝顔がまだ眠たげに咲いていた。
迎えてくれたのは、日焼けした笑顔が爽やかなご主人だった。会社をしばらく休まれているとのこと。どこか肩の力が抜けて、家の空氣も穏やかだった。
「腰がちょっとね、最近疲れてるようで」と、ご主人は照れ笑いを浮かべながら言った。
施術は想像よりも早く身体が緩みはじめた。全体をゆっくりと、丁寧に施していくと、ご主人の顔色が少しずつ変わってくる。言葉には出さずとも、身体のリズムが深呼吸のように落ち着いてきたのがわかる。
日常の中で何の不調も感じていなくても、こうして身体が緩み、足の上がり方や姿勢が変わってくると、「あ、自分、疲れてたんだな」と氣づくことがある。
「こんなもんだと思っていたことが、実は諦めなくてよかったんですね」
そう呟いたご主人の一言が、とても印象的だった。静かで、力強かった。
施術を終えた後、リビングで冷えた缶コーヒーをいただいた。いつも飲んでいる銘柄だそうだが、今日はなんだかおいしいと、笑っていた。
「冷静になって、味を感じると変わらない。でも、嬉しい氣持ちがあると、同じ味でも美味しく思えるんですよね」
なるほど、と思った。味そのものではなく、心の状態で“美味しさ”が変わる。身体が緩むと、心も少しずつ緩んでいく。喜びが戻ってくる。そうすると、いつもの風景が違って見え、缶コーヒーすらも宝物のように感じるのだろう。
帰り道、私は若戸大橋のたもとへと向かった。ここには老舗の店がいくつも並んでいる。古き良き昭和の香りを残しながら、今も変わらず暖簾を掲げる人たちがいる。
「よくぞ続けてこられました」と声をかけたくなるような、そんな商いの姿がそこにあった。
一方で、最近は休業のお知らせも目にするようになった。体調を崩されたとの張り紙に、胸が詰まる。どれほど大切な役割を果たしていた人でも、健康を崩せば続けることが難しい。改めて思う。健康であることは、何かをするための前提であり、何もしない日ですら支えてくれる大きな土台なのだと。
健康について、AIに聞けば答えが出てくるような錯覚をしてしまいそうになる。でも、本当の答えは、空の広さや地面の匂いと同じように、自分の中にある。天地とつながって、自分の身体と静かに対話していく。そんな時間の中にしかないのだ。
それはとても個人的で、誰かと比較するものではない。施術を通して、私もまたそれを深く学んでいるのだと感じた。
雷鳴はいつの間にか遠ざかり、蝉の声だけが静かに残っていた。

コメント