静けさのなかに宿るもの ──CS60LOHAS北九州緩み・雨の日の遠賀町立図書館
- 管理者
- 8月9日
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夏の熱気に包まれた遠賀郡水巻町。
午後の陽射しは容赦なく、アスファルトから立ち上る陽炎が景色を歪ませていたが、ふとした拍子に雲が空を覆い、雨粒がポツリポツリと降り始めた。
「恵みの雨ですね」
そう言って施術後のお客様が窓の外を見つめる表情は、どこか安心したようにも、何かを懐かしんでいるようにも見えた。
この日は、CS60の出張施術で水巻町にお伺いした日だった。
いつもながら、お客様の体のリズムに寄り添い、静かに流れを感じる時間。呼吸が深まり、目に見えない緊張がほどけていくその瞬間に立ち会うのは、何度経験しても神聖な気持ちになる。
帰り道、ふと思い立って、遠賀町立図書館へと向かった。
川のほとりに建つその建物は、四季折々の風景のなかで、静かに人を迎え入れる場所だ。今日は生憎の雨だったが、その静寂こそが、図書館の魅力を一層引き立てていた。
館内に足を踏み入れると、ほんのりと紙の匂いが鼻をくすぐる。新しい本のインクの香りと、年季の入ったページが醸し出す時間の層が交差する、不思議な空間。
目的は、セネカの手紙に関する文献などを探すことだったが、ついつい目にとまった郷土史の棚に足が止まる。遠賀川流域の民話、かつて炭鉱で栄えた町の歴史、そして、昭和の暮らしを切り取った写真集。
図書館には、書店とは違う魅力がある。
商業的な華やかさや流行の波とは一線を画し、まるで森の奥に佇む小さな泉のように、静かに、確かに、知の源を湛えている。
ページをめくるごとに、自分のなかの何かが、そっと撫でられていくような感覚があった。
本の内容以上に、読みながら沈みこむこの“静けさ”こそが、今の私に必要だったのかもしれない。
窓の外では雨がしとしとと降り続いていた。
いつもなら読書スペースとして開放されている屋外のテラス席も、今日は誰もいない。だけど、その濡れた席としっとりした空氣が、かえって心を落ち着けてくれるようだった。
図書館を出たころには、雨は小降りになっていた。
駐車場へ向かう足元に、雨粒をはじく木の葉があり、小さなカエルが一匹、こちらをじっと見ていた。
CS60の施術も、本も、雨も、自然も。
どれも「調和」を思い出させてくれるものだと氣づいた。
それは、決して大きな音を立ててやってくるものではない。
ただ静かに、必要なときにそっと差し出される。
その日、私は図書館で何かを学び、本のページ以上の何かに触れた氣がした。
それが何だったのかは、まだ言葉にできないけれど。
次に誰かの身体に触れるとき、きっと指先の奥に、その静けさが宿っているだろう。

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