高いところから落ちて格好が悪かった話~八幡西区CS60施術日記~CS60LOHAS北九州緩み
- 管理者
- 8月5日
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八幡西区の初夏の風がそよぐ午後、私はその男性のもとへCS60の出張施術に向かった。
建設業に従事する彼──仕事道具をいつも大切に扱い、責任感と使命感を胸に抱く温厚な男性。この日もCS60を携えて、背中のこりと腰の疲れ、そして肩の張りを緩めるために訪れた。
彼の仕事道具は、全て同じブランドで統一されており、まるで芸術品のように整然と輝いていた。
高所の現場では墜落防止用具を欠かさず装着し、身を守る安全意識は徹底している。その器具ひとつひとつも、彼には道具として以上の存在だった。
しかし、現場での彼は冷静な理性と情熱を同時に腹の底に抱えていた。
仕事仲間がミスをしたときにはその場で感情の糸が切れ、強い口調になってしまうこともある。だが「なぜそのやり方が間違いなのか」を、相手が理解し納得できるまで、誠意をもって語り続けるのだった。
彼にとって「共に力を合わせて一つの工事を完了させる」ことこそがもっとも大切な使命だった。
ある日の現場。比較的大きな機械を手にして、高所を移動していたときのこと。足元の確認が一瞬だけでも甘かった。まるで落とし穴に吸い込まれるかのように、その瞬間、彼の視界からすべてが消えた。
――だが、その時、偶然が味方した。彼の手元にあった機械の一部が作業台のフレームに引っかかり、遠心力で地面へ一直線に落ちるスピードが緩和された。
さらに、その足元にはエアパッキンや段ボールが敷かれていて、それも衝撃を分散する役割を果たしていた。
機械に一部破損はあったものの、部品はホームセンターで簡単に交換できる程度。それを知った彼は、「不名誉だとは思うけど、助かった」と苦笑した。自分の不注意を恥じながらも、命が無事だったことを静かに喜んでいた。
その怪我ひとつない無事の背景には、彼の職人魂と慎重さ、そして偶然の“構造物”たちがあった。しかし、無事だったからこそ彼は「格好が悪かった」と笑った。
職人としての誇りと、あの落下の一瞬を思い出すと、どうしても顔が熱くなるのだという。
職場で揉めた相手からもらったお詫びの鶏卵われせんべいは、そんな彼の誤算の一コマの“慰め”でもあった。シンプルで素朴な味わいのそのせんべいは、山口県ではよく見かけるものの、北九州市周辺では珍しい一品だそうだ。
彼は仕事帰りに立ち寄ったコンビニで唐揚げとコーヒーを買い、食後にせんべいをひと口。クリスピーな割れせんの香ばしさに、しばし現場の緊張から解放され、微笑んだ。
後日、休日に車を走らせ山口県へ行き、再びその鶏卵せんべいと、大好物の“しそわかめふりかけ”を買い込んで帰ってきたという。
施術が終わった後、私たちはリビングでコーヒーを傾けながら、彼が辛うじて持ち帰ったそのせんべいを共に味わった。
彼は「こんな時だからこそ、ほっとする甘さや素朴な味が身に沁みる」と話す。
温かい手技でほぐされた筋肉の奥から、徐々に深呼吸が戻ってくるようだ。
夕刻の窓辺から差し込む光は、そんな彼の背中に穏やかな明かりを投げかけていた。
――工事現場の汗と緊張、落下の恐怖、そしてせんべいのほのかな甘さ。
施術でほぐれた身体と、彼の言葉。
それは私にとっても深い“物語”として記憶に残る午後だった。

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